大阪高等裁判所 昭和48年(ラ)72号 決定 1974年6月28日
抗告人 戸田洋行(仮名)
相手方 戸田昌子(仮名)
主文
原審判を取消す。
相手方の本件同居の申立を棄却する。
抗告費用を相手方の負担とする。
理由
一 抗告の趣旨および理由
別紙記載のとおりである。
二 当裁判所の判断
当裁判所の認定するところは、原審判理由中、第一項(4)四行目「昭和四六年未ごろ」を「昭和四六年夏ごろ」と訂正するほかは、同項記載のとおりであるから、これを引用する。
本件記録によると、原審判は、抗告人が昭和四六年末ごろまで相手方と夫婦関係を継続し、同人らの間の二人の子供との間に交流もあつたこと、抗告人から離婚について明確な意思が表明されていないことを主な理由として抗告人に同居を命じたものである。
ところで、夫婦の一方が他方よりの同居請求を拒絶するについては、もとより正当の事由を要するが、この正当事由は夫婦間の愛情の冷却、当事者一方の同居意思の欠如、その他の事由のため到底円満な共同生活を期待できないような状況にあるときは、夫婦のいずれもこれを理由として同居を拒絶することができると解すべきである。本件の場合、抗告人はすでに昭和三七年頃から加住元子と関係をもつて同棲し、その間に四人の子供を儲けている状態である。もつとも、抗告人は、昭和四六年夏ごろまでは時々相手方との間に夫婦関係もあり、又、二人の子供との交流もあつたことは原審判断のとおりであるが、本件記録によると、これは、抗告人の優柔不断な性格にもよるが、抗告人としては、正式の離婚の手続をとることによつて、婚姻の継続と同居を強く希望する相手方およびその親族らの感情を決定的に悪化させ、その結果、社会的に何らかの不利益を受けるのではないかということをおそれて躊躇したまでであつて、抗告人が強く離婚を希望しており、全く同居の意思もないことは明らかである。したがつて、抗告人に同居を命じてみても、円満な夫婦生活を到底期待できないと認められるから、同居を命じた原審判は不当である。
よつて、本件抗告は理由があり、家事審判規則一九条二項により本件申立を棄却することとし、抗告費用を相手方に負担させることとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 増田幸次郎 裁判官 三井喜彦 福永政彦)
(別紙編略)